医療事故の報告義務のある病院は全体のわずか3%

患者が医療を受けるとき、何よりも心配しているのは医療事故です。医師の皆さんは日々の診療で、「そんなに念を押して確認しなくても大丈夫。よっぽど信頼されてないのかな?」とお思いになるときがあるかもしれませんが、1999年の横浜市立大病院の患者取り違え手術以降も、重大な医療事故が頻発しており、患者の気持ちも理解できないことはありません。

医療事故は、過失や故意性が認められる「医療過誤」と、現代の医療技術では防ぎようのない事故の両方を意味していますが、実際にどのくらい起きているのでしょうか?

既にご存知かと思いますが、2004年10月以降、医療法施行規則によって医療事故の報告が義務付けられているのは、特定機能病院、大学病院の本院、国立高度専門医療センター、国立病院機構、国立ハンセン病療養所だけです。

報告先である財団法人「日本医療機能評価機構」は、報告内容の周期栄・分析や、再発防止の参考となる事例の情報提供を行っていますが、事故が起きた施設名は、すべて非公開となっています。

2009年は、報告義務のある273施設のうち、212施設から計1895件(うち死亡156件)の事故報告がなされました。2005年〜2009年の5年間に報告された7011件(死亡708件)を集計すると、事故に会った患者の9割は入院患者でした。

事故の分野は、報告件数が多い順番に看護・介護が34%、治療処置が29%、機器・用具が10%…となっています。発生場所では病室の45%をはじめ、手術室14%、廊下4%…となっています。関係したスタッフの職種は、医師(4641人)、看護師(4409人)が大半を占めています。

このデータでは、医療行為や看護を実行する段階の失敗が主に報告され、診断や治療方針の誤りはあまり報告されていないようです。しかも、報告義務があるのは病院総数の3%、病床数で見ても10%弱に過ぎません。任意で報告に参加している400あまりの病院を含めても、ごく一部です。

それ以外の病院、診療所は、事故が起きても報告義務がないため、何件発生して何人死亡したのかさえ、わからないのが現状です。保健所へ届ける義務もありません。しかしながら、年間の死者数を見積もった研究は、いくつかあります。

例えば、厚生労働省の研究班は2003年〜2005年に18病院の全カルテを分析した結果、入院患者の6%に有害事象があり、その3.8%は死亡が早まったと報告しました。また国立保健医療科学院にいた長谷川俊彦氏は2002年、海外5カ国で入院患者の平均8.9%に有害事象があり、その5%が死亡していたというデータを、日本の病院の退院患者総数に当てはめ、「年間5万2000人が死亡、うち半数は予防可能」と推計しました。

 
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