訴訟が多い診療科は内科、外科、整形外科、産婦人科

医療訴訟は1990年代後半か徐々に増え始め、2000年代に入るとさらに急増し、その傾向は2004年まで続きました。具体的には、1994年には506件だった訴訟件数は、10年後の2004年には1,110件と倍増しました。

この期間に訴訟件数が急増した背景には、@手術患者を取り違えた「横浜市立大病院事件(1999年)」と注射器を取り違えた「都立広尾病院事件(1999年)」によって、医療に対する信頼感が失われた結果、疑問の残る診察・治療については医師の過失を疑い、医療訴訟に訴えるケースの増加を助長したこと、A患者の権利意識の高まりによって、自身が受けた診療の詳細に関心を持つ人が増えた―という2点が挙げられます。

ただ、医療訴訟は2005年以降、やや減少傾向にあります。その理由としては、多くの医療機関の間に、@医療ミスや診療に関する患者との認識の違いを減らそうと努力する、A医療事故の際に院内に調査機関を立ち上げて、原因究明に取り組む、B患者に診察の方針や経緯を詳しく説明したり、カルテに診療内容を詳細に書いておくこと―などが浸透したため、「これは酷い」と感じるような医療事故が減ったこと。それにより、訴訟前に示談になるケースが増えたことなどが考えられます。

また、以前は「福島県立大野病院事件」のように、医療側が「なぜこれで訴えられるのか」という理不尽なケースが多く見られましたが、近年は患者側の弁護士もカルテを精査したり、公正中立の立場である第三者の医師に意見を求めるなど、医療の実情を勘案することが増えてきたことも、一因として挙げられるでしょう。

しかしながら、過去10年で弁護士が急増(1.8倍)したことに伴い、医療知識に乏しいといわざるを得ない弁護士が、医療訴訟を引き受けるケースも目立ち始めています。その結果、的外れな論点が設定されたまま、不毛な議論が延々と続くことも少なからずあり、医師としては決して楽観できる状況ではありません。

以下の数字は、過去5年間の診療科目別に見た訴訟件数の推移です。内科、外科の数字が目立ちますが、訴訟リスクが最も高いのは産婦人科となっており、内科の4倍(=医師1000人あたり12件)となっています。産婦人科については、医療ミスの有無に関係なく、分娩による高度脳性麻痺の補償を行う産科医療補償制度が開始されました。これにより訴訟にまで発展するケースがどの程度減るのかが注目されています。

診療科目 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年
内科 256 246 228 229 237
小児科 33 36 22 22 22
精神科(神経科) 32 25 30 33 29
皮膚科 19 11 9 10 17
外科 188 170 180 165 147
整形・形成外科 139 137 126 124 129
泌尿器科 24 26 18 22 9
産婦人科 161 108 99 84 89
眼科 28 30 27 23 24
耳鼻咽喉科 23 14 19 19 28
麻酔科 10 7 8 4 6

 
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