医療裁判ではカルテ、薬剤添付文書、ガイドラインが重要な役割を果たします

一般の民事訴訟では、証人の証言が有力な証拠として採用され、裁判の行方を大きく決定付けます。また、刑事訴訟では、被告人や被疑者、目撃者の陳述を録取した調書、現場検証の検証調書、物証が重要な証拠となります。

医療裁判においても、これらが重要な証拠として採用されることにはなんら変わりありませんが、医療過誤が密室で起きること、専門性が高いこと、法律で客観的な記載と保管が義務づけられていることから、カルテが証拠として果たす役割は非常に大きいといえます。また、ガイドラインや各種マニュアル、薬剤添付文書なども同様に重要です。

このように、医療裁判では、カルテなどの各種医療記録、鑑定書といった文書を頼りに、事件を時系列的に再現し、過失の有無、因果関係の有無を判断するのです。したがって、カルテなどの医療記録を記載するときには、万が一を意識した記載をしておく習慣が大切となります。

医療裁判では、医療側が「実際の臨床現場では、自分たちの病院のような手順で運営を行うのが一般的」と主張しても、裁判官がその主張を受け容れず、医療側の主張で触れなかった薬剤添付文書やガイドラインを引き合いに出して、過失ありと判断することがしばしばあります。

薬剤投与については、最高裁で「薬剤添付文書に記載された使用上の注意事項に従わずに医療事故が発生した場合には、従わなかったことについて特段の合理的な理由がない限り過失が推定される」と判事されています。

また、私立病院で起きた医療事故に、国立病院におけるガイドラインを適用して、その過失を認定した事例もあります。したがって、薬剤添付文書や各種ガイドラインには十分な注意を払っておく必要があるといえます。

医療裁判だからといって、医療の専門的な知識を有した裁判官が裁判を担当するということはありません。むしろ、裁判官は医療の専門知識を持っていない素人であるのが普通です。そのため、訴訟の現場では、中立かつ専門的な知識・経験を有する立場である医師などのに鑑定を依頼し、提出される鑑定書に基づいて判断を下すことになります。

ただし、鑑定書は裁判官に対して拘束力を持っているわけではありません。実際、鑑定書は信用できないとして、裁判官が自己が抱いた心証に従って、全く違った結論に至った事件もあります。当事者としては、各種医学文献を調べて、自己の主張の正当性を立証するように心掛けるようにしましょう。

 
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